こうじとは
 日本で発酵食品をつくるときの代表的な菌はアスペルギルス・オリゼー(またはA・オリゼー)という学名を持つコウジキンですが、この菌は事実上、日本特産なのだそうです。
 こうじには「麹」と「糀」の二種類の漢字が充てられていますが、「糀」は米こうじにのみ充てる国字で、それのみで米こうじの意味を成します。米以外のこうじには「麹」の漢字を使います(麦麹、豆麹等)。この米や麦、豆等に麹菌をまとわせたものを麴と呼びます。
 時に、「米糀自体を自分で作れないか?」と思い挑戦してみました。 以下、麹菌培養の奮闘記を記していきます。

(2023.4.11)


<友麹~準備>  <種から1>
はじめに
 ふと、甘酒の仕込みにプラ容器を使い続けてきた(百均のガラス瓶は早々にやめた)ことが気になり、ネットでガラス製の仕込み容器の製品を見つけたので5年近く使ってきたヨーグルトメーカーを買い替えることにしたのが2023年の3月初頭。
 また、以前より「ヨーグルトは市販品を牛乳に入れて増やせるんだから麹菌もいけるだろ?」と思っていたのですが、それにまつわる情報と出会ったことで悪い癖が出てしまい、また新たな長い旅が始まることに。(正直、楽勝だろうと舐めてました。)
友麹による米糀づくり
 新しく保温機を探していた時に「友麴」という技があることを知り、手元に届いた新しく買った保温機を見て「これなら行けんじゃね?」と思い、ちょうど糀がなくなりかけてたこともあり友麹に挑戦してみました。
 友麹とは手持ちの糀を種麹の代わりにし、新たに蒸した米に混ぜて糀にすることで増やしていくやり方です。 ネットには米を蒸さずに少なめの水で炊いた米を使って糀を作っている記事も紹介されていたので、道具や出費を増やしたくない思いから、まずは固めに炊いた米に糀を混ぜるやり方を試してみることにしました。
はい、失敗です。
 写真で分かりにくいですが、米がおじやの様にべちゃべちゃになってしまいました。
 糀に対して倍の分量のご飯と混ぜて35℃で48時間保温、途中で3回かき混ぜています。 仕込んで15時間後に一回目の撹拌をした時には全体的に薄っすら短い菌糸が見えたりしていい手ごたえだったのですが、それからは水分が多すぎたのか下の方の米の形がなくなっていき、48時間後には腐敗臭まで漂ってきました。
ちょっとハラをくくります。
 方法はともかく、ネットではいずれも大したことなさげに書かれていたので簡単に考えていましたが、実際に三日間菌と向き合い、一筋縄では行かないと悟りました。
 さて、ここでわずかな無駄で済ませて手を引くかあえて茨の道を行くか6秒ほど悩んだのですが、好奇心は抑えられず、このまま突き進むことにしました。何より、今まで朝顔を育てては花が咲く前に枯らしてみたり、メダカを飼ってみてはカビさせて死なせてしまったり、ウサギなどの小動物は手に負えず手放したり、鳥や嫁には逃げられたりと一度も生き物をちゃんと育てられなかった人生だったので、せめて人生の最後にこの菌を立派に育てきる覚悟で腹をくくりました。そんな感じでまずは基本に帰ります。
 いきなり友麹は難しいと考え、ちゃんと種麹から育てることにします。
 種麹を扱うお店があるのでそこから購入します。後から知ることですが、現在種麹を扱うお店は全国で10件ほどしかないそうです。思わず身震いしました。
 菌を培養するために安定した温度が必要になります。ネットでは熱源に湯たんぽや電気毛布やこたつ等が使用されていましたが、試行錯誤ができるように移動させることができて空間的余裕も欲しいと考えました。保温ケースのようなものにしたかったのですが、買えば数万円します。今、ポンと出せる金額ではないので、ネットで見つけた食卓用の保温機を使うことにしました。これだと五千円ほどです。(のちに後悔します。)
 安定して保温できるように発泡スチロールケースを購入。ホームセンターで千円弱。
 線を出してふたができるように細工。
 百均で買った木材で下駄を作ります。
 最終的に1回1kgの仕込みで運用したいので、大きめのタッパーを購入。
 ホームセンターで900円ほど。(のちに後悔します。)
 保温機の熱が直接伝わらないよう、このようにして使います。
 最後はサーモスタットです。これ無くして楽して緻密な温度管理はできません。
 ちなみにここまでそろえた物とやり方は何かを見たわけではなく、全て完成予想から逆算して組み立てています。 この、歴史からではなく経験から学ぶ馬鹿なやり方のせいでこのあともれなく色々と後悔する羽目になりますが、それはまたのお話です。